■シェイクダウンテスト
どのチームより勝負をかけて(?)乗り込んだ、RYOさんチーム。シェイクダウンテストも重要だ。(といっても本当の理由は普段運転していないラリー車に慣れるため??)
今回協力にサポートしてくれたのはシルバーストーンタイヤ。数年前、日本のダートラでも好成績をのこしたあのタイヤだ。日本ではなじみが少ないかもしれないが、アジア圏のラリーではポピュラーなタイヤ。したがって今回のような高速ラリーにもノウハウをばっちりもっている。シェイクダウンテストでは、RYOさんのためにHQホテルから40分ほどのシェイクダウンテストコースまでわざわざ来てくれる力のいれよう。この慣れない丁重な扱いに初っ端からRYOさんはプレッシャーで緊張モード。(他にサポートしているチームがいるのでそんなに緊張することないんですよ、RYOさん・・)
さて、シルバーストーンタイヤ・マネージャーのラッセルとテストコースの出口で待つ。供給チームの一台ずつにコメントを求めるラッセル。やはりAPRCイベントともなると真剣なのか・・。そしてRYOさんが来た! ラッセルそしてそのエンジニアも駆け寄りコメントを期待する。
『いやあ、サスペンションはOK。ちゃんと走るね。まだ慣れてないから。いやあ、暑い・・・。』
のぞきこむラッセルの心配そうな顔をみて
『タイヤもOK!!』とRYOさん。
(・・そうだよな、まずは車に慣れなきゃ。)
そして3周目。『慣れてきた。もちょっといけるな。もう一回。あ、タイヤ・OK!!』
そして4周目。『いい感じ。そろそろいいかな。もう一回だけ。あ、タイヤ・のーぷろぶれむ!!』
・・・”ちょっと、RYOさん、タイヤのコメントもう少しくださいよ”と心の中で叫びながら、いろいろ言葉を付け足して通訳。なんと言ったって彼らは期待している・・。
『タイヤはとても走りやすいらしい。慣れない道、慣れない高速コースだしマシンもサスペンションも探りながら走っているみたい。それから・・』
『そうだね、クルマに慣れないとね。あんまり運転してないし』とラッセル。
『・・・。』
さすが百戦錬磨のラッセル、すっかりRYOさんのことをお見通し。(ちょっと気が楽になったな・・・。)
ちなみに、こんなRYOさんですが、『いつもニコニコ、いつもジョークを飛ばしてとっても親しみやすい人だ』とラッセルをはじめシルバーストーンのスタッフみんなに大人気でした。さすが・・。
そんなこんなで、マシンコンディション、そして一番大事なドライバーコンディションはバッチリ。すっかり準備万端。あとは午後からの車検だ!
【写真は上海VWチームのPOLO。右の赤Tシャツの人がラッセルさん】
■出発・到着
RYOさんは積極的に毎年WRCラリー・オーストラリアに参戦しているドライバー。『アルペンラリーで激走のVIVIO』といえば知っている人も多いのでは? 実はインプレッサ乗りでもあります(こっちが本命車かな)。彼の人柄か、チームはいつもメンバーみんながラリーを満喫。~日本一(?)のプライベートチーム。
今年はラリー・オーストラリアがスケジュール変更、いつもの11月から9月初頭へ・・。某レストランオーナー(※)のRYOさんは9月といえば大忙しの時期。当然今年は断念せざるを得ない状況。そこで白羽の矢が立ったのがAPRCイベントのラリー・タイランド。ところが参戦の決心がついたのは船積みを数日後にひかえる直前のある日。早速、マシンを送る手配に帆走。ところが??なんとマシンは車検切れ。JAFでは車検切れでは輸出に必要な所有者証明は出せないと厳しいお言葉。そして・・・
大きな声ではいえないがバケットシートも実はFIA公認の期限切れが船積み前日に発覚。横浜・山下埠頭の8号倉庫の前で別のものに交換するハプニング。純プライベートチームのRYOチーム。あ~・・こんなことならメインテナンスでマシンを預かるんだった・・。
さて、10月25日他のチームスタッフと現地入り。ラリー開催場所はバンコクから200キロ近く西方のRAYONGという町。リゾート地PATAYAに近いが工業都市でもある。大型スーパーあり電気屋さんありの何でも手に入りそうな街。なんたって、直前のどたばた事件をみれば、チームマネージャーといっても今回は『買い物係』になりそうだと容易に想像がつく。
とっても楽しいタイラリーになりそうな予感!?
(KONITAN)
(※)清里にあるレストラン『ROCK』。雰囲気とってもGOODです。
今回ドライブしたマシン、知る人ぞ知る“RACE TOURUQUE”(オーストラリア)製EVO7。MRFチームのアーミン・クレーマーのマシンはここが製作しています。ほかの香港製EVO8の2台はこのクルマを参考に製作してありました。もちろんEVO8なので2003年のレギュレーションに合うようにちゃんとモディファイされ、ロールケージの作りもラリー装備の仕上げも非常にレベルが高い。香港モータースポーツの底力!?を実感。さすがにいいものを手本にしているとレベルって上がってくるモンです。
このチームって日本よりレベル高いかも・・・。
あまりに全体がよくできているのでしばらく気づかなかったが、2003年から義務となったFIAロールケージパッドが一つも装着されていないことを発見。ところがそれを指摘すると、チーフメカのコメント。
『ここは中国。オレたちに任せておけ・・・』って。
・・・でも今回ってAPRCイベントなんですけど!?
Leg2
ラリーも中盤になってくると疲労がたまり、いろいろなドラマが発生してくる。
今回のラリーもすでにリチャード・バーンズやフランソワ・デルクールなどが一日目でリタイアとなり、波乱を感じさせる雰囲気が漂う。
ことしのラリー・オーストラリアには、フォレスト・ステージの名物だった、ミュレスクのステージが復活された。
ミュレスクは、地元カーティン大学の農業学部の広大な農園で、見晴らしのいいのぼりのストレートに現れる連続ジャンプが見もの。
しかも、SS14,15と連続して行われるので(前半ナンバーの車のみリバースオーダーで、連続して走行する)、続々と車両がやってくるので、スペクテイターにも見ごたえ十分のステージだ。
ただし、このステージはホコリも十分。2ステージぶん立っているだけで、体中が茶色になってしまう・・・。
このステージでは、プライベーターで参加していた船木/園田組が、なんとドライブシャフトを一度に3本も追ってしまうアクシデントで、観客のいる目の前でストップ、リタイアとなってしまった。
このほか、コリン・マクレーもここでストップ。今回はリタイアがずいぶん増えそうだ・・・。
という小西も、マシンの調子も上がりペースを上げかけていたところだったが、ラングレー・パークに戻る手
SS18で、ターボに異常が発生。煙まで吹き出し、ここでリタイアとなってしまった。
せっかく調子をつかんだところだったのに、本当に悔しい・・・。
そして、チーム・メイトのディーンは、カンガルーに衝突しマシントラブル。ラングレーパークのサービスまでは戻りなんとかパルクフェルメにまでは入ったが、依然調子は不安定。明日一日持つかどうか。
小西にとっては志半ばで終わってしまったオーストラリアだが、これもラリー。
いろいろな収穫はあったのだから、次回のためにつなげていきたい。
Leg1-a
10月31日、いよいよスタート。ドライバー・小西の晴れ舞台が近づく。
ラリー・オーストラリアの名物といえば、ラングレー・パークでのスーパーSS。通常のSSと違い、スーパーSSでは、2台が同時に走行するため、エンターテイメント性の高いステージが観客を楽しませる。ラングレー・パークは、パースの象徴でもあるスワン川のほとりにある横長い公園。普段は芝生が広がっているだけの公園だが、ラリーの一ヶ月前になると土砂が運び込まれ、クロスオーバーを含む2.2kmのコースが特設される。コース内には、大型ビジョンが設置されるほか、コメンテイターによる中継なども行われるし、敷地内にはホットドッグやドリンクなどのスタンドショップも開かれる。ワークスチームのサービスは大型テントの中に設置され、中央の通路を挟んだ両側では、世界最高峰のチームメカニックによる、最高のメカニック・サービスを見ることもできる。ラングレー・パークでのスーパーSSはこの日のほか、金曜日、土曜日の夜にも同じコースで行われる。
スーパーSSとはいえリザルトはオーバーオールで集計されるが、とにかく対戦相手との勝負に勝つことは、スーパーSSでのアピールにもつながる。1日目の小西の相手は、マイケル・トンプソン。オーストラリアのベテラン・ドライバーだ。しかも相手の車は同じインプレッサといえども、グループA。グループNの小西には、不利な相手だ。コメンテイターも小西を応援してくれている。
スタートダッシュは、小西が先手!これに驚いたコメンテイターの注目は、終始小西の走りに集中した。最初は「Japanese Driver」と呼んでいたのに、最終コーナーに入るころには「Konishi, Konishi」を連呼。ゴール直前のストレートではかなりの接戦となったが、コンマ一秒差で、見事勝利! 幸先のいい滑り出しとなった。
小西の気分は上々。最初の一本目で軽く走ったつもりだったが、何よりデュアル・トライアルでの勝利はうれしいものだ。明日からのドライブにも弾みがついた。今日の走りはこのスーパーSS一本でおしまい。明日からのラリーも気合を入れて小西は走る。
(A/m/s 発信)
Leg1-b
ここ数年のラリーオーストラリアは、10月最終週~11月に開催される。
このころのパースの気候といえば、春から夏に移るころで、とても過ごしやすい・・・ハズなのだが。
なんと、昨晩は雷が落ちて暴風が吹き荒れるストームが来襲し、朝にはヒョウまで降る始末。日中も雨が降ったり晴れ間が出たりと、なんともタイヤ選択の難しい天候となった。
雨は続いているが、天気は昇降気味との予報。小西はカットタイヤを選択したが、路面状況は予想よりも乾いていた。
オーストラリアといえば、砂利がボールのように丸いベアリングロードのスリッパリーな路面が有名。
しかし、適度に湿度を含んだ泥までもフカフカになって、どんどんワダチが出来上がってしまう。後方スタート車にはかなり不利な状況だ。
しかも、今回もこの日だけで3度のパンク! そのうち2回はよりによってこの日の最長・38.93kmのステージで発生してしまった。エンジンの調子もいまいち上がらず、ペースを上げることができない。
それでも後半に向かうサービスで、エンジン不具合の原因が解明できたし、明日は天気もいいらしい。
ここまで悪いことが重なったから、後はラックを信じて、ラリー後半に向けてペースをあげていく。
ラリー全般では、シリーズチャンプを決めたグロンホルムが相変わらず強いが、約30秒差でソルベルグが追いかけている。
そろそろ優勝があってもおかしくないと言われているだけに、毎年ドラマが起こるこのパースでは、ある意味チャンスがあるかもしれない。
残念なのは、小西が師匠と仰ぐポッサム・ボーンがサスペンション・トラブルでリタイアしてしまったこと。
北海道での優勝、NZでのグループN優勝など絶好調だっただけに、本人も悔しいだろう。本当にラリーで勝つことの難しさを痛感させられる。
この日のステージは2回目のラングレー・パークを含む8本。パースを180kmほど南下したハーベイという町の付近に設定される。
ハーベイといえば、オレンジの産地で有名なところで、ハーベイ・フレッシュというオレンジジュースが人気。
また、スターリング・ダムというダムを周回するステージは見晴らしがよく、このラリーで一番最初に観戦できるポイントだけあって、金曜日の平日だというのにたくさんの人が訪れた。週末はもっとたくさんの人が訪れるだろう。みんなにいい走りを見てもらうよう、小西もがんばっていきたい。
(A/m/s 発信)