渡りが終わると次のSS4だ。このステージは10km程だが、その高速たるやものすごい。後々計算してみるとアベレージは約130km/h。いやあ、こういうSSを走らなきゃラリードライビングは上達しません。高速コースは大得意なもののさすがに久しぶりの4速、5速のコーナリングに、ブレーキがあまりっぱなし。コーナーに進入で5速から4速にシフトダウンしてまたシフトアップする失態も・・・。でも5速でコーナーを踏み切る“快感”もすこしずつ思い出した。~やっぱりこれだよな!
それしても冷静に考えれば危険極まりない。道幅が広いとはいえ数センチのダストが表面い積もったグラベルロード。感覚はそのまま雪道。これを5速全開コーナリングして両側には並木道・・・なんてシチュエーションなんだから。ほとんどゲームの世界。さすがにこのスピード域では、しっかりしたマシンでなければ走りたくない。ストレートでアクセルを踏みつけながら何度シートベルトを確認したことか。これに比べていかに日本での道が安全か・・・。このようなSSを一度やってしまえば、みんな安全なマシン作りの大切さを実感できると思うんだけどなあ・・・~ちょっと無謀な意見かな!?
ちなみにこのSSのトップスピードは自分のランサーで『209km/h』でした。
もちろんリストリクタ-もついたグループNです。
それにしてもランサーは暑い。
ルーフベンチレーション付インプレッサがいいなあ、やっぱり・・・。
【SSスタート前の風景。後ろは最近オトナのヤナギ。ずいぶん安定してるんだよね。プレッシャー攻撃に動じないし。1本は勝ったけど、いつもわずかにコンマ2、3秒負ける。チキショーっ・・・乗りなれたインプレッサだったらなあ・・・まあ久々のグラベルラリーでこれくらいの差だからよしとするか!?】
さて、いよいよチャイナラリーのスタート。セレモニアルスターと会場は恵州の町の新興開発地区。筑波学園都市のような道路や街頭などが整備され、大きなスタジアムや体育館や植物園?などおおきな建物がならぶ場所だ。その一角にスタート会場は作られている。
スタート前のパルクフェルメ(マシンの待機場所)にクルマを入れると、周りはずらっと人、人、人・・・。一般の人たちは柵の外側にいるが、柵がなかったらちょっと怖いくらいだ。ここの雰囲気はラリーというより、サーキット。アドバルーンがあがり、チャイナチームはレースクイーンもいて華やか。なんだか解らないがいろんな関係者が近くをうろうろ・・とにかく雰囲気は盛り上がってます。これくらい全日本ラリーも盛り上がればなあ・・・。
ちなみにこのスタートセレモニーは2分間隔でのスタート。これをテレビで“だらだら!?”と生中継していたようです。(夕飯を食べながら自分たちのスタートシーンの再放送を鑑賞。でもちょっとアクビが・・・。でもこれが中国の人たちには新鮮なんだろうな・・・。こんなことなら何かパフォーマンスをするべきだった。次回への反省点?)
ちなみに、ここでの“ばらまきグッヅ”の威力はすごかった。スポンサー企業のロゴが入ったストラップをばらまいたけど、みんな血相を変えて奪い合い・・・PRの原点ですね。
さて、セレモニアルスタートの後は2台同時併走のスーパーSS。しかし、雰囲気的には栃木県のダートトライアル場の“丸和”にアップダウンをつけたようなコース。山を切り崩したちょっと殺風景なコースです。しかし、レッキで感じた印象とは正反対。当日はこれまたものすごい人です。ひな壇のようにしてつくられた観客スペースはすべて満杯。丸和に人をいっぱいに入れたさらに3倍くらいの人がいます。
それにしても埃がひどい。ただえさえドライな土地をさらに切り崩して作ったステージだけに、自分が到着した頃には、もう走っているマシンが見えないほど。これはまずい。相手はオーストラリアチャンピオンのコディー。負けるのも悔しいし・・・。
とにかく始めてのEVO7ですが、一生懸命走りました。コディーには負けちゃったけど。それにしても普段からインプレッサに慣れきっているだけあって、EVOのドライビングは恐怖との戦い。だって鼻先(フロントのオーバーハング)が異様に長く感じるんです。ついでにお尻(リヤのオーバーハング)も。コーナーではイン側の土手にビクビク、立ち上がりでは外側の土手にビクビク。ん~、この教習生の気分。われながら新鮮!?
そういえば、このスーパーSS会場で大人気だったマシンが1台。いつもの台湾パートナー、TRSラリーチームからエントリーのGDBだ。このマシンは自分が製作アドバイス、そしてテストも担当した“台湾初のFIAグループN仕様”あの“GDBインプレッサ”です。なんで人気だったかって??それはここのチームマネージャーのTONYがTCにたむろする観客に向かって『あっ台湾のムービースターが来るぞ』って言ったから(ドライバーの本業は保険会社のオーナー)。これに反応した観客がサインをもとめてマシンの周りに殺到し・・・
中国で名をあげるのは果たして“難しいのか?”そいれとも“簡単なのか?”
・・・はっきり言って“謎”です。
【埃のヒドさがわかります? ちなみにこのコースは、今回エントラントだった香港籍のドライバー・チャンチーワーの持ち物とか。写真提供は香港OPTION誌】
ラリー勝負はキロ当たりコンマ何秒の世界。キロ2秒ちがったら勝負は話になりません。ところが、勝敗というのは、ラリーのスタート前に50%決まるといっても過言ではありません。つまり事前のマシンのセッティングというものは重要で、サスペンションのセットアップ、エンジンのセットアップ等々、それだけでキロ当たり1秒なんてすぐ変わってしまいます。下手をするとキロ2秒くらいすぐ違うことも・・・。
今回は、チームと顔合わせのお試し参戦!?ということで臨時でEVO7をドライブです。もちろん、いままでもインプレッサと比較テストでドライブしたことはありますが、イベント参戦となると遠い昔の話(実は初海外ラリーはEVO1でニュージーランド)。マシンの正確を掴むのとセットアップで結構不安があるもの。そんなわけでチームにはみっちり最低3時間は走る時間を設けて欲しいと事前に打診。チームも“トライしてみる”との返答。
さてレッキ前日がテストとしては最後のチャンス。オフィシャルシェイクダウンも設定はされているが、十分走れるとはいえず、当チームは独自にテストを実施することに。
まずは、エンジンテスト。片側3車線の広い直線路でフル加速。最大パワーやその特性を煮詰めていく。その後、ミスファイアリングの効き具合。しかし、EVO7の特性を熟知しているわけではないので、どういう特性がベストか探りにくい。1週間ほど前にSTIのスペックCベースのグループNを試乗したばかりだったので、EVOはどんなにトルクフルなんだろうと期待して乗ったものの、意外にトルク感がない。これはインプレッサ05仕様がよくできている証拠か!? とりあえず、まあまあと思えるところでセッティング終了。
エンジンテストなので4速,5速まで入る。スピードはゆうに140km/hほど。交通事情の危なげな中国において比較的安全な場所を選ぶ必要がある。なんといっても時速20km/hくらいのトラックは走っているし、スピードを知らないこの国では一時停止なしのクルマが路地から平気ででてくる。人間の横断も縦横無尽。
ところが、中央分離帯があって3車線道路のこの道なら大丈夫だろうと考えたのが甘かった。右側通行の国なので当然追い越し斜線は3車線の一番左。右側の路地から出てくるクルマに注意しながら加速・・・。
『うあっー!!??・・・』
正面からトラックがこっちを向いて走ってくる。
~路地から出てきて左折したいヤツはしばらく反対車線を走るのである。
・・・やはり中国恐るべし、想像を越えた世界。。。
エンジンテストの後は、サスペンションのテスト。実はこれが自分の中では優先度が高い。サスペンションのセットアップはタイムに大きく影響するし、乗りにくいセッティングでは危険にもつながる。
『テストってどんなところでやるんだ』と興味津々。
しかし帰ってきた答えは『すぐそこさ。4速には入らないかも・・』
・・・ちょっとやな予感。
さてサービスカーに先導してもらテスト場所へ。大通りから曲がるとダート路がはじまる。どうやら養豚場にむかう生活道路らしい。道幅は日本の“田んぼ道”状態。しばらくいくと大きな広場がある。
いよいよテスト場所か・・なんて遠く先をを眺めるもつかの間、
『今きた道だから。ここで折り返しね。』
『・・・』
ここ!?、だって400mくらいしかないぞ。コーナーも2箇所??(確かに小さなクレストはあったけど)間違いなく、世界一のショートテストコース!?
1速でスタートして、2速~3速~・・そしてすぐフルブレーキング~!
一応サスペンションをいろいろ変えてみて様子をみてみる・・。でもこれじゃあ、何にも解りません。ここで、早くも今回のラリーのリザルトにちょっとした不安が。
でもラリーは常に与えられた状況でベストを尽くすもの。
いやあ、自分って最近オトナだよな・・。
【テスト?終了後の風景。帰路はテストカーを運転してもらいます。右がチームコーディネータ。左のオジサンがチーフメカ。50歳ですがものすごいタフです。いい腕してます。】
今回自分が走るのは“Tong Wha Sing Fu On Rally Team”。 香港のタイソウ(大儀DaiSwa)という俳優が率いるチームだ。彼の年齢は50歳くらい。背が高く体格もいい、いかにも“悪役”って感じの俳優。そういえば99年のWRCチャイナラリーに参戦したとき、香港のとあるチームにそんなドライバーが参加しているという話を聞いたっけ。その時はちゃんと話をしなかったのでどんな顔だったか覚えていない。
しかし一緒に歩いていると彼のの有名度のすごさがよくわかる。今回の舞台となったそれなりの大きさの街(日本でいえば横浜市の中心街ぐらいか)にもかかわらず、ホテルのロビーでも外を歩いていてもすれ違う人10人中10人が『あッ・・』と目線が固まる。本人目の前にして指をさす人もいるし・・・。レストランに入っても店のお客がみんなこっちを見て“ひそひそ・・”。ものすごい有名なんだなあ、と少しづつ実感してきた。(実は最初に会ったときにそんな本人を目の前に『オレは知らなかった』って自信もって言っちゃったけど・・・。実際、日本ではみんな知らないでしょ。)
でも今回、自分のコドライバーのエドモンドはマレーシアから来たんだけど、『マレーシアでもみんな知っているよ・』って言っておりました。ちなみにこのタイソウさんには付き人のマネージャがいてカバンや荷物はみんなその人がもっているし、携帯が鳴るとその人が手渡す。さらにはボディビルダーのようなボディガードも常にそばにいます。う~ん、すごいチームに来てしまったぞ・・・。
今回のマシンはランサー。本当ならインプレッサを用意してくれというところだが、オファーからイベントまで1ヶ月半前ではそれも無理だろう。『しょうがないなあ・・』と承諾。さて、承諾した後に向こうからの回答。『EVO7とEVO8があるけどどっちがいい?』・・・なんとリッチな話。さてどうしたものか? とりあえず『詳細を教えてくれ』と質問。返ってきた答えは 『EVO7はオーストラリア製、EVO8は香港製・・』。即答で!?EVO7をチョイスした(理由はご想像にお任せ!?)。
それにしても今回のチームはどうもリッチなチームだ。まずはラリーカー。今回はランサーEVO8がレッキ車もいれて3台、EVO7が1台、EVO4が1台。これら5台にはすべてに1台100万円前後のプロフレックスサスペンションが装着されている。200万円近いドグミッションも2基あるとか・・。いやはやすごいものだ。今回、中国人ドライバーも含め4台体制。2台はレンタルカーだ。日本ではなかなか無いなあ・・こういうチーム。想像以上だった。
そして機材。サービストラックは2台だがそのうち一台は日本でいえば6トン車くらいか。クルマ2台分位の外装パーツから足回りパーツなど、たいていのことはできるだけのスペアがそろっている。タイヤチェンジャーもあったし、でもなぜかホイールバランサー??まであった。やはりこれも想像を越える世界・・・。
そしてスタッフ。メカニックは総勢何人??っていうくらいの人数。自分はゼッケンが早いだけに、サービスではわっと皆がクルマに取り掛かる。その数10~12人。いやはや既にワークスチームを超えているな、これは。チーム内には食事関連のコーディネータと車両のテクニカル面のコーディネータと2人がいます。そしてスポンサーのご一行が時々わっと押し寄せ、また自称スポンサーなる“応援団”もチームテントにうろうろ。そんなんで、とにかくいろんな人が声をかけてくれるので大変な騒ぎ。でもこれが結構楽しいんだけどね・・・。
【今回のラリーカーはこれ!、スポンサーは“Tong Wha Group”栄養ドリンク(精力剤!?)らしい。残念ながらサービスではこれは出てきませんでした・・・?】