SS8くらいから サスペンションセッティングもやっと“最低レベル”くらいのセッティングが見つかり、ランサーのドライビングも楽しくなってきた。インプレッサの速いドライビングは進入どちらかといえばモーションは大き目、コーナーの出口方向にあらかじめマシンの向きを変えて弱オーバーステアかニュートラルステア状態でのコーナリングを心がける。アンダーステアでいくと、コーナー中盤での“ステアリングの切り足し”の反応がよくないから。EVO7もこんなイメージで走らせていたら、あるコーナーで気が付いた
『なんだ・・ステアリングきり足せばまだ曲がるじゃん!』
そう、もっと弱オーバーステアで行くほうがトラクションもかかるのでコーナリングが速いんです。
“EVO7のドライビングは1日にしてならず!?”
まだまだ早く走らせそうです・・。
さて、迎えたSS10。このステージは過去に経験したことのないような最悪のダスト。部分的に全く視界が利かない。これは、まずいとペースダウン。しかし、こんなときに限ってペースノートもロストしかけ・・・。
『あっ・・』思ったより左コーナーが深い。慌てて向きを変えるも今度は運悪くイン側クリップに立木。そしてわずかに道を外れアウト外側の側溝(といっても土がえぐれている溝のようなもの)へリヤとフロントを落とす・・・・。とここまではアクセルを踏んでいれば“4WDの威力”で脱出できるものでラリー中はよくある話!?
しかし、アクセルを踏むもガラガラ音を立てながら少しずつスピードが落ちていく。やがて立ち往生。スタックだ・・・。
そして悔しいリタイヤとなってしまった。ゆっくりドライブするだけで総合5位は確実だったのに・・・。といまさら悔やんでも仕方がない。ラリーっていつもこんなもの。突如として終わりが来る。
しかし、なんかシックリ来ない。スタックするほどじゃなかったのに。あとでメカニックに聞いてみてびっくり。フロントのホイールのスポーク部分がすべて割れていたのだ。溝に落ちて5mくらい走ったときにちょっと土手にヒットはしたもののそんなに衝撃は大きくなかった。実際、サスペンションアームどころかアライメントも狂ってなかったそうだ。
なんとなく解せないなあ・・・。
・・・まあ側溝に落ちるのが悪いんだけどね。
【これが問題のホイール。次に中古を使うときはよ~くチェックしよう・・・。でもまた使うのがちょっと不安。ちなみに欧州のラリーでは有名なメーカーモノなんです。】
リタイヤした場所はものすごい埃。あまりの埃に後続車も音だけしか聞こえない。全身“真っ白”で“玉手箱をあけた浦島太郎”状態だ。後続車へのリタイヤ車注意サインをセットするも、この視界の中じゃぶつからないか心配。考えた挙句、衝撃で外れたリヤバンパーを一つ前のコーナーの脇に立てかけることにした。(これを見た後続のドライバー、びっくりしただろうなあ・・・)
さて、フィニッシュ方向に向かってコドライバーのエドモンドと歩き出す。5km以上あるから結構大変。やがて小さな集落が。とりあえずここでスイーパー(最終ゼッケンの後の救出用のオフィシャルカー)が来るまで待つことにする。
この集落、ほんの2家族くらいが住む窓ガラスも扉も存在しない小さな家。前の畑では、大きな水バケツを棒の両側に吊るし、畑に水を撒いている。隣の牛舎では1頭のみの牛がモ~と鳴き、ニワトリが駆け回る中庭で子供たちが泥んこになって遊んでいる。ここには水道も電話もテレビもない、もちろんバイクやクルマも。時代は100年前で止まっているかのよう。
・ ・・しかし、こんなのどかな風景、そしてこんな場所で生活する人たちに触れることが出来るなんて。観光じゃ絶対ありえません。
これもリタイヤしたおかげ? けっこう“中国好き”の自分としてはリタイヤ気分が癒されました。
よ~し、来年は中国チャンピオンだ!!
そして23日土曜日はSS2からはじまる本格的ステージのレグ1だ。コースは3本を3回リピートする構成。距離はそれぞれ14km、10km、そして最長24km。
まずはSS2。久々に本格グラベルロードを攻める。ランサーだからか久しぶりだからか?いやいやショックのセッティングもなっていないからか?どうも違和感がある。でも走るのは最高に気持ちがいいもの。こんな微妙な感覚は今までにない感覚!?。次第にリズムに乗った頃、前走車のコディ・インプレッサがストップ。どうやら、その前のマシンが転がって道路をふさいでいるらしい。100km/h以上でバンピーな田んぼのあぜ道(のようなところ)を突っ走るっていきなり狭くなるセクションだ。転がったのはスズキイグニスのアトキンソン。コドライバーは昔の相棒グレンマックニールだ。自分が到着したときは既に転がったマシンは起こされた後。50mくらいにわたって“黄色い弾丸”(イグニスの広告より抜粋)のパーツが散乱。クラッシュのすさまじさを物語る。
『大丈夫か?』と声をかけると『no problem!』との答え。
よかった、無事のようだ。
しかし、小柄なアトキンソンに巨漢のグレン。だれが見ても小さなイグニスには“バランス最悪”コンビ。
次に会ったとき、
『おまえたちのコンビはチームに適正なのか考えてもらったほうがいいぞ・・・なぜなら・・』といい終わらないうちにパンチが飛んできた。
・・・さすがアイツ自分のことは昔からよく理解しているようだな。
それにしても99年のWRCチャイナラリーではレグ2でグレンと組んだときはアイツはもっとヘビーだったはず。(推定102kg?いまは比較的スリムだが)いま思い返してみるとあの時はバランスが悪くてコースアウト・リタイヤだったのかも!? 左ハンドルのインプレッサで右の土手にクラッシュしたもんな・・・。
【SS2とSS3の間のリエゾンには“渡し舟”があります。クルマ4台ずつを2艘の小さなフェリーが交互に運ぶ。この上ではつかの間の休息。ドライバー同士も和やかに会話が弾みます。ちなみに写真はレッキ時のもの】
渡りが終わると次のSS4だ。このステージは10km程だが、その高速たるやものすごい。後々計算してみるとアベレージは約130km/h。いやあ、こういうSSを走らなきゃラリードライビングは上達しません。高速コースは大得意なもののさすがに久しぶりの4速、5速のコーナリングに、ブレーキがあまりっぱなし。コーナーに進入で5速から4速にシフトダウンしてまたシフトアップする失態も・・・。でも5速でコーナーを踏み切る“快感”もすこしずつ思い出した。~やっぱりこれだよな!
それしても冷静に考えれば危険極まりない。道幅が広いとはいえ数センチのダストが表面い積もったグラベルロード。感覚はそのまま雪道。これを5速全開コーナリングして両側には並木道・・・なんてシチュエーションなんだから。ほとんどゲームの世界。さすがにこのスピード域では、しっかりしたマシンでなければ走りたくない。ストレートでアクセルを踏みつけながら何度シートベルトを確認したことか。これに比べていかに日本での道が安全か・・・。このようなSSを一度やってしまえば、みんな安全なマシン作りの大切さを実感できると思うんだけどなあ・・・~ちょっと無謀な意見かな!?
ちなみにこのSSのトップスピードは自分のランサーで『209km/h』でした。
もちろんリストリクタ-もついたグループNです。
それにしてもランサーは暑い。
ルーフベンチレーション付インプレッサがいいなあ、やっぱり・・・。
【SSスタート前の風景。後ろは最近オトナのヤナギ。ずいぶん安定してるんだよね。プレッシャー攻撃に動じないし。1本は勝ったけど、いつもわずかにコンマ2、3秒負ける。チキショーっ・・・乗りなれたインプレッサだったらなあ・・・まあ久々のグラベルラリーでこれくらいの差だからよしとするか!?】
さて、いよいよチャイナラリーのスタート。セレモニアルスターと会場は恵州の町の新興開発地区。筑波学園都市のような道路や街頭などが整備され、大きなスタジアムや体育館や植物園?などおおきな建物がならぶ場所だ。その一角にスタート会場は作られている。
スタート前のパルクフェルメ(マシンの待機場所)にクルマを入れると、周りはずらっと人、人、人・・・。一般の人たちは柵の外側にいるが、柵がなかったらちょっと怖いくらいだ。ここの雰囲気はラリーというより、サーキット。アドバルーンがあがり、チャイナチームはレースクイーンもいて華やか。なんだか解らないがいろんな関係者が近くをうろうろ・・とにかく雰囲気は盛り上がってます。これくらい全日本ラリーも盛り上がればなあ・・・。
ちなみにこのスタートセレモニーは2分間隔でのスタート。これをテレビで“だらだら!?”と生中継していたようです。(夕飯を食べながら自分たちのスタートシーンの再放送を鑑賞。でもちょっとアクビが・・・。でもこれが中国の人たちには新鮮なんだろうな・・・。こんなことなら何かパフォーマンスをするべきだった。次回への反省点?)
ちなみに、ここでの“ばらまきグッヅ”の威力はすごかった。スポンサー企業のロゴが入ったストラップをばらまいたけど、みんな血相を変えて奪い合い・・・PRの原点ですね。
さて、セレモニアルスタートの後は2台同時併走のスーパーSS。しかし、雰囲気的には栃木県のダートトライアル場の“丸和”にアップダウンをつけたようなコース。山を切り崩したちょっと殺風景なコースです。しかし、レッキで感じた印象とは正反対。当日はこれまたものすごい人です。ひな壇のようにしてつくられた観客スペースはすべて満杯。丸和に人をいっぱいに入れたさらに3倍くらいの人がいます。
それにしても埃がひどい。ただえさえドライな土地をさらに切り崩して作ったステージだけに、自分が到着した頃には、もう走っているマシンが見えないほど。これはまずい。相手はオーストラリアチャンピオンのコディー。負けるのも悔しいし・・・。
とにかく始めてのEVO7ですが、一生懸命走りました。コディーには負けちゃったけど。それにしても普段からインプレッサに慣れきっているだけあって、EVOのドライビングは恐怖との戦い。だって鼻先(フロントのオーバーハング)が異様に長く感じるんです。ついでにお尻(リヤのオーバーハング)も。コーナーではイン側の土手にビクビク、立ち上がりでは外側の土手にビクビク。ん~、この教習生の気分。われながら新鮮!?
そういえば、このスーパーSS会場で大人気だったマシンが1台。いつもの台湾パートナー、TRSラリーチームからエントリーのGDBだ。このマシンは自分が製作アドバイス、そしてテストも担当した“台湾初のFIAグループN仕様”あの“GDBインプレッサ”です。なんで人気だったかって??それはここのチームマネージャーのTONYがTCにたむろする観客に向かって『あっ台湾のムービースターが来るぞ』って言ったから(ドライバーの本業は保険会社のオーナー)。これに反応した観客がサインをもとめてマシンの周りに殺到し・・・
中国で名をあげるのは果たして“難しいのか?”そいれとも“簡単なのか?”
・・・はっきり言って“謎”です。
【埃のヒドさがわかります? ちなみにこのコースは、今回エントラントだった香港籍のドライバー・チャンチーワーの持ち物とか。写真提供は香港OPTION誌】
ラリー勝負はキロ当たりコンマ何秒の世界。キロ2秒ちがったら勝負は話になりません。ところが、勝敗というのは、ラリーのスタート前に50%決まるといっても過言ではありません。つまり事前のマシンのセッティングというものは重要で、サスペンションのセットアップ、エンジンのセットアップ等々、それだけでキロ当たり1秒なんてすぐ変わってしまいます。下手をするとキロ2秒くらいすぐ違うことも・・・。
今回は、チームと顔合わせのお試し参戦!?ということで臨時でEVO7をドライブです。もちろん、いままでもインプレッサと比較テストでドライブしたことはありますが、イベント参戦となると遠い昔の話(実は初海外ラリーはEVO1でニュージーランド)。マシンの正確を掴むのとセットアップで結構不安があるもの。そんなわけでチームにはみっちり最低3時間は走る時間を設けて欲しいと事前に打診。チームも“トライしてみる”との返答。
さてレッキ前日がテストとしては最後のチャンス。オフィシャルシェイクダウンも設定はされているが、十分走れるとはいえず、当チームは独自にテストを実施することに。
まずは、エンジンテスト。片側3車線の広い直線路でフル加速。最大パワーやその特性を煮詰めていく。その後、ミスファイアリングの効き具合。しかし、EVO7の特性を熟知しているわけではないので、どういう特性がベストか探りにくい。1週間ほど前にSTIのスペックCベースのグループNを試乗したばかりだったので、EVOはどんなにトルクフルなんだろうと期待して乗ったものの、意外にトルク感がない。これはインプレッサ05仕様がよくできている証拠か!? とりあえず、まあまあと思えるところでセッティング終了。
エンジンテストなので4速,5速まで入る。スピードはゆうに140km/hほど。交通事情の危なげな中国において比較的安全な場所を選ぶ必要がある。なんといっても時速20km/hくらいのトラックは走っているし、スピードを知らないこの国では一時停止なしのクルマが路地から平気ででてくる。人間の横断も縦横無尽。
ところが、中央分離帯があって3車線道路のこの道なら大丈夫だろうと考えたのが甘かった。右側通行の国なので当然追い越し斜線は3車線の一番左。右側の路地から出てくるクルマに注意しながら加速・・・。
『うあっー!!??・・・』
正面からトラックがこっちを向いて走ってくる。
~路地から出てきて左折したいヤツはしばらく反対車線を走るのである。
・・・やはり中国恐るべし、想像を越えた世界。。。