エンジンテストの後は、サスペンションのテスト。実はこれが自分の中では優先度が高い。サスペンションのセットアップはタイムに大きく影響するし、乗りにくいセッティングでは危険にもつながる。
『テストってどんなところでやるんだ』と興味津々。
しかし帰ってきた答えは『すぐそこさ。4速には入らないかも・・』
・・・ちょっとやな予感。
さてサービスカーに先導してもらテスト場所へ。大通りから曲がるとダート路がはじまる。どうやら養豚場にむかう生活道路らしい。道幅は日本の“田んぼ道”状態。しばらくいくと大きな広場がある。
いよいよテスト場所か・・なんて遠く先をを眺めるもつかの間、
『今きた道だから。ここで折り返しね。』
『・・・』
ここ!?、だって400mくらいしかないぞ。コーナーも2箇所??(確かに小さなクレストはあったけど)間違いなく、世界一のショートテストコース!?
1速でスタートして、2速~3速~・・そしてすぐフルブレーキング~!
一応サスペンションをいろいろ変えてみて様子をみてみる・・。でもこれじゃあ、何にも解りません。ここで、早くも今回のラリーのリザルトにちょっとした不安が。
でもラリーは常に与えられた状況でベストを尽くすもの。
いやあ、自分って最近オトナだよな・・。
【テスト?終了後の風景。帰路はテストカーを運転してもらいます。右がチームコーディネータ。左のオジサンがチーフメカ。50歳ですがものすごいタフです。いい腕してます。】
今回自分が走るのは“Tong Wha Sing Fu On Rally Team”。 香港のタイソウ(大儀DaiSwa)という俳優が率いるチームだ。彼の年齢は50歳くらい。背が高く体格もいい、いかにも“悪役”って感じの俳優。そういえば99年のWRCチャイナラリーに参戦したとき、香港のとあるチームにそんなドライバーが参加しているという話を聞いたっけ。その時はちゃんと話をしなかったのでどんな顔だったか覚えていない。
しかし一緒に歩いていると彼のの有名度のすごさがよくわかる。今回の舞台となったそれなりの大きさの街(日本でいえば横浜市の中心街ぐらいか)にもかかわらず、ホテルのロビーでも外を歩いていてもすれ違う人10人中10人が『あッ・・』と目線が固まる。本人目の前にして指をさす人もいるし・・・。レストランに入っても店のお客がみんなこっちを見て“ひそひそ・・”。ものすごい有名なんだなあ、と少しづつ実感してきた。(実は最初に会ったときにそんな本人を目の前に『オレは知らなかった』って自信もって言っちゃったけど・・・。実際、日本ではみんな知らないでしょ。)
でも今回、自分のコドライバーのエドモンドはマレーシアから来たんだけど、『マレーシアでもみんな知っているよ・』って言っておりました。ちなみにこのタイソウさんには付き人のマネージャがいてカバンや荷物はみんなその人がもっているし、携帯が鳴るとその人が手渡す。さらにはボディビルダーのようなボディガードも常にそばにいます。う~ん、すごいチームに来てしまったぞ・・・。
今回のマシンはランサー。本当ならインプレッサを用意してくれというところだが、オファーからイベントまで1ヶ月半前ではそれも無理だろう。『しょうがないなあ・・』と承諾。さて、承諾した後に向こうからの回答。『EVO7とEVO8があるけどどっちがいい?』・・・なんとリッチな話。さてどうしたものか? とりあえず『詳細を教えてくれ』と質問。返ってきた答えは 『EVO7はオーストラリア製、EVO8は香港製・・』。即答で!?EVO7をチョイスした(理由はご想像にお任せ!?)。
それにしても今回のチームはどうもリッチなチームだ。まずはラリーカー。今回はランサーEVO8がレッキ車もいれて3台、EVO7が1台、EVO4が1台。これら5台にはすべてに1台100万円前後のプロフレックスサスペンションが装着されている。200万円近いドグミッションも2基あるとか・・。いやはやすごいものだ。今回、中国人ドライバーも含め4台体制。2台はレンタルカーだ。日本ではなかなか無いなあ・・こういうチーム。想像以上だった。
そして機材。サービストラックは2台だがそのうち一台は日本でいえば6トン車くらいか。クルマ2台分位の外装パーツから足回りパーツなど、たいていのことはできるだけのスペアがそろっている。タイヤチェンジャーもあったし、でもなぜかホイールバランサー??まであった。やはりこれも想像を越える世界・・・。
そしてスタッフ。メカニックは総勢何人??っていうくらいの人数。自分はゼッケンが早いだけに、サービスではわっと皆がクルマに取り掛かる。その数10~12人。いやはや既にワークスチームを超えているな、これは。チーム内には食事関連のコーディネータと車両のテクニカル面のコーディネータと2人がいます。そしてスポンサーのご一行が時々わっと押し寄せ、また自称スポンサーなる“応援団”もチームテントにうろうろ。そんなんで、とにかくいろんな人が声をかけてくれるので大変な騒ぎ。でもこれが結構楽しいんだけどね・・・。
【今回のラリーカーはこれ!、スポンサーは“Tong Wha Group”栄養ドリンク(精力剤!?)らしい。残念ながらサービスではこれは出てきませんでした・・・?】
今回のエントリーにはAPRC常連たちがずらり。ラリージャパンを興味を持って見ていたヒトにはなじみのある名前でしょう。プロトンのカラムジット・シン、日本からはカツ(田口勝彦)そしてキャロッセのヤナギ(柳沢宏至)、それからドイツチャンピオン・アーミンク・レーマーやニュージーランドのジェフ・アーガイルなんかもいます。
興味深いのは、チャイナ国内のチームの“助っ人”ドライバーたち。
写真はラリージャパンにも出ていた、オーストラリーアチャンピオンのコディ・クロッカー。かれはタイヤディーラーのスポンサードの“黄色いインプレッサ“。そして一番リッチな“紅河(タバコ)”チームはスウェーデンドライバーが助っ人です。それから“即咳停(咳止め~製薬会社)”の黄色いランサーにはイギリスのデイビッド・ヒギンスがいます。とにかくいろいろな “すご腕”ドライバーが勢ぞろい。けっこう熾烈なコンペティションで、とにかく走りがいがあります。
かく言う自分も、今回は香港チームの助っ人ドライバー。自分のゼッケンは14番。久々のAPRCではあったが、幸い過去の中国での実績が効いているのか、スターティングオーダーはヤナギの前で7番目。さあ、楽しみ。。
【このチームだけでなく、他のチームもレースクイーンが華々しく参加します。この雰囲気、日本のラリーだったらかなり“浮いちゃいそう”だけど・・・】
仙台にいたころから後輩的つきあいだったダートラドライバーの早川選手が8月末に全日本ラリーデビューした。
ラリー直前からペースノートの特訓。そして林道ドライビングレッスン。まずペースノートはいまのラリーでタイムを出すためには必要不可欠なテクニック。まずはここから学んでもらう。まずは手本のペースノートをつくります。それをコドライバーに読んでもらって聞きながら軽く流すという練習。まずは基本が大事。道路形状の表現をどう記号に置き換えていくかは出来上がったものを反復して体験するのが一番。そうするうちに景色と記号とがリンクしてきます。そしてそれを数回反復した後、いよいよ自分自身でペースノートを作ってもらうという作業。とにかく地道なトレーニングです。速く走るわKでもなく、ひたすら呪文のように『R3・L4・40・R3>・・』と繰り返します。教えるコドライバーもひたすら忍耐。そんなこんなでようやく『形っぽく』はなる。あとは走りの部分か・・。
でもさすが全日本ダートラでも優勝する実力の持ち主、運転はスムーズで無駄がない。過重のかけ方も実にうまい。あとは林道特有のラリー走りさえ身につけてしまえばいい線にいきそう。
早川選手の初ラリー挑戦は全日本二輪駆動のソネットラリー。栃木県那須を舞台に行われるラリー。やはりやるからにはSS勝負ラリーということで私がこのラリーを選びました・・
車検前は準備であたふた・・ジャッキやら車載工具やらとにかく固定の仕方が中途半端・“これじゃあ・危ない・・やり直し・・”と大変な騒ぎ。昨今のラリーは安全に関しての意識が上がってきている。そういう意味ではやはり彼もラリーの現場では素人だったか。さて今回は日がまだ高いうちからSSがスタート。先日の“うまい”運転を確認していたし、彼の意外に冷静な雰囲気にさして心配もせずにサービスパークで帰りを待つ。ところが・・・『やってしまいました・・』という悲痛な電話。あ~・頼むよ~・かつてはあれだけクルマを壊さないやつだったのに・・・こういうときに限って・・”ということで積載トラックを借りに行く羽目に。やはり初挑戦。やる気と不安と負けず嫌い・・いろいろ複雑な思いが入り乱れていたのだろう。走りを見ていたカメラマンからもちょっと“危なかったかなあ”というコメント。まあ、初挑戦、しょうがないか。そうやっていろいろ学んでいくものかもしれないし。
でも後日の彼の一言『いやあラリーは面白いですねえ・もっとやってみたいです・』。なかなか楽しみなヤツではある・
【同じSSでリタイヤのこの2台。それにしても・この写真、問題ありだな】